2007年10月分
第8期
「あら恭ちゃん携帯買ったの?」
「うん、指示を出すのに必要だったしね」
小学生の台詞ではないそれに、奈々はにこにこと笑う。
何の、とは聞かなかった。単に鈍いのか、それとも大物なのか。
「そうだわ!私の携帯の番号とアドレス教えておくから、
恭ちゃんも教えて頂戴!」
楽しそうにはしゃぐ姿に、雲雀は一瞬迷ったものの、
まあいいか、とあっさりと承諾した。
それから数年後。
「・・・・・・母さん」
「なぁに?ツッくん」
「・・・・・・なんか母さんの送信ボックスの宛先、ほとんど恭弥さんで埋められてるんだけど」
娘は少し用があって手に取った母親の携帯片手に、微妙に震えた声を必死で隠しながら詰め寄った。
「そりゃあ恭ちゃんにはメールいっぱい送ってるもの」
どこかずれた返答が返ってきて、娘こと綱吉は気の抜けそうになるのをなんとか踏みとどまる。
「しかも受信ボックスも『恭ちゃん』の項目でいっぱいなんだけど?!」
「だって恭ちゃん送ったらきちんと返事くれるもの」
にっこり。
奈々は天使の笑顔であっさりとのたまう。
ちょっとまて。え、何それ。
「なんでそんなフレンドリーーーー?!」
話した覚えもないのにやたらと学校でのことを知っていたりするなとか
恭弥さんのこと話題に出すわりに元気かとかは聞かないなとか思ってはいたが。
「今度来る時のお夕飯は何がいいとか、最近の様子はどうとか。
最近は携帯の性能も上がってきたから、写真つきのメールもいっぱい送ってるのよ」
にこにこと教えてくれる母親は何故か自慢気。
「そ、そう・・・・・・」
あの恐怖の風紀委員長相手に、ナチュラルにそう言ってのける偉大なる母親に
がっくりと膝をつく。
これは昔からのことであるが、何故だかこの母親とかの幼馴染は異様に仲が良い。
それは知っていた。知っていたけれど!
なんだかものすごい敗北感が綱吉を襲った。
(オレって、オレって・・・・・・!!)
ちょっと泣く。
しかしそれで終わりかと思えた攻撃は、きっちりトドメまで用意されていた。
「それにこの携帯も誕生日に恭ちゃんがくれたものだし」
ちなみに最新機種。
綱吉が片手に持っていたそれが、がしゃんと音をたてて地面に落ちる。
「・・・・・・」
「?」
「か、か、か・・・・・・」
「母さんのバカーーーーーー!!!!!!!」
とりあえずそれだけ叫んで泣いて逃げた少女は、
それから数日立ち直れなかったとかなんとか。
無自覚シリーズ裏話。たぶんリボーンがくる前。
奈々さんと雲雀さんは連絡を取り合ってますよというお話(え、そうだっけ?
ちなみに写真はもちろん綱吉を撮ったものばかりです。
雲雀さんは多分全部保存(無自覚)してあると思います。
綱吉はなんでこんなに自分がショック受けてるのかも気づいていないというミステリー。
ちなみに2人の仲の良さに一番驚いているのは書いてる本人です(爆)
ドクロ病とかいうまた意味不明な病気になった。
いい加減この赤ん坊を呪っては駄目だろうか。
しかも女しか診ないというふざけた医者までやってきた。
・・・・・・マフィアってこんなのばっかりなんだろうか。
「んーどれどれ」
「へっ、って何す――・・・・・・」
「・・・・・・よくわからんな」
いきなりオレの胸に手を乗せた男は、そのせいで一瞬呆けたまま混乱しているオレにそう言うと、
あろうことかそのまま握るように掴んだ。
「お、あっ―――」
「ってなにすんだこんのど変態野郎めがぁああああああああ!!!!」
た、と手のひらに伝わった感触に嬉しそうに挙げかけた声は、
最後まで伝わることなく野太い悲鳴へと変化した。
恭弥さんとの戦闘時も真っ青。
べきぼきゃ、やら何やら打撲だけとは思えないいい音をたて、
全身全霊全てをかけた見えない程の渾身の奇跡の右ストレートが、見事な弧を描いて男を宙にまわせた。
どさり、と屍と化したそれが地に叩きつけられる。
スパルタな家庭教師からやるじゃねーか、と珍しくもお褒めの言葉まで頂戴してしまった。
それをなした少女ははぁはぁと怒りに身を震わせ、ぷるぷると俯いた肩がゆれている。
(つかんだつかんだよつかまれた掴まれた掴まれたーーーー??!!!)
恭弥さんにも触られたことないのに!!
しかも触ってもわかんないとかだからってにぎんなこの変態どうせオレはちっちゃいよ!
駄目だ。
なんか色々駄目だ。もうまともな思考回路は残っていない。
色んな事にショックを受けつつうちひしがれていると、
騒ぎを聞きつけたのかビアンキがやってきて、何事かと部屋に目をやり、伸びている男を見た後、
オレと目を合わせ―――・・・・・・
お互いぐっと親指を立てあった。
その日、オレ達は、確かに何かが通じ合ったのを感じた。
無自覚シリーズシャマルがやってきた編。
殺しかけてますが治療どうしたんでしょうね(爆)
この綱吉は自覚前です(え、そんなあほな
実は続きます。
→そんなことがあった後の雲雀さん
「やぁ、赤ん坊」
「ちゃおっす、ヒバリ」
廊下で珍しくも恭弥さんとはちあわせした。
よりにもよってリボーンが肩にのっているこの瞬間に!
もちろんリボーンに興味津々な恭弥さんは嬉しそうに話しかけてくる。
「ツナもいるぞ」
当たり前だ肩に乗ってるんだから。
ああでもそっちに話をふらないでくださいリボーン様!
オレの話題をふられた恭弥さんがちらり、とオレを見やる。
それにびくり、とオレの身体が恐怖で震えた。
余計なことを言ったりはしないだろうかとびくびく怯えつつ、
(お願いですから何も言わないでください〜〜〜!!)
必死で目で訴える。
それが通じたのかなんなのか、恭弥さんはすぐにふい、とオレからすぐに目を離してくれて、
ほっと胸を撫で下ろした。
すると。
「お、ボンゴレじゃねー」
か、と言い終わるより早く、オレが後ろからのその声に反応してセクハラに身構えようとするより早く、
その声が誰であるのか確かめようと振り返ったと同時に、それは物理的に黙らされた。
ドゴォッ・・・・・・!!
と、恭弥さんの構えている銀色の武器が、
あれシャマル生きてる?とか思ってしまうほどの鈍い音を響かせ、
その身体を宙で見事な円を描かせながらふっとばす。
・・・・・・あれ、なんかデジャヴュ。
「ひ、ひばりさん・・・・・・?」
唐突にシャマルを咬み殺したお方を、何事かとおそるおそる覗き込むと、
何故かそのトンファーに付着した血痕を見やるやたらと整った顔には疑問符が浮かんでいた。
「・・・・・・これ、誰?」
不思議そうに恭弥さんは問いかける。え。
「知らないのになんでいきなり?!」
別に群れてたりしてなかったし、恭弥さんの逆鱗に触るようなことはしてなかったし、
風紀も(恭弥さんの前ではまだ)乱していない。
恭弥さんはこれで何も咬み殺す理由がない相手はほっとく人だから、
てっきりシャマルが何かしたのかと思っていたのに、
自分でも何故いきなり咬み殺したのかわかっていないっぽい。
少し不思議そうに、けれど何故か苛立たしげに恭弥さんは宣言した。
「無償に殺意がわいてね。咬み殺さなきゃいけない気がしたんだ」
どこからの本能ですかそれ?!
「うん、咬み殺したくなってきたよ。殺していい?」
「なんかレベル変わってるーーー!!」
今にもトドメをさしそうな恭弥さんにつっこみつつ押し留めながら。
ちょっとざまあみろとか思っちゃったのは、シャマルの名誉の為に黙っててやることにした。
無自覚シャマルネタその2。
綱吉も雲雀さんも無自覚。
でももちろん理由はいわずもがな(爆)