2008年3〜4月分



第11期


※寮生ヒバツナパラレル続編



なんでこんなことになっているんだろう。

さほど早いとは言えない(何故なら綱吉は起きるのが遅い)朝食の席。
寮生用のかなり広さのある学食で、何故か向かいには一つ上の先輩。
それが普通の先輩なら何の不思議もない。ありえなくもない光景だろう。
ただし、相手はどう転んだところで普通とは言えない人物だった。
「さっさと食べなよ。君、食べるのも遅いんだから」
綺麗な姿勢、箸使い、気品さえ感じさせながらもくもくと朝食をとっているのは、
群れが嫌いで有名な風紀委員長雲雀恭弥。
本来なら朝のこむ時間帯で席が足りなくなるのもありえる食堂で、
綱吉の半径5メートルはクレーターができたかのごとく人がいない。
理由は目の前のこの人が怖いからだ。触らぬ神に祟りなし。
もう一度思う。
何故こんなことになっているのだろう。
実はこうして一緒に朝食をとるのは初めてではない。
雲雀は朝でも仕事があるらしく毎日とまではいかないが、それでも一週間に一回はこうして一緒に食事をする。

何が目的かは知らないが、ぶっちゃけ綱吉は少々怖かった。

(そりゃ、嬉しくないって言ったら嘘なんだけど・・・・・・)
自分の気持ちを自覚している以上、やっぱり好きな相手とこうして一緒にご飯を食べられる事は嬉しい。
そもそも一緒にいられる時間が増えるのは大歓迎なのだ。
それでも恐怖を感じてしまうのは、まあ、それとこれとは別ってことで。
「君、好き嫌いしすぎじゃないの」
「ほ、ほっといてください」
綱吉のトレイの上を見ての台詞に、思わず言い返してしまってから、しまったと青褪める。
相手は恐怖の風紀委員長様なのだ。気分を害したら咬み殺される。
しかし恐る恐るみやった相手はさして機嫌を悪くした様子はなかった。
胸を撫で下ろす。だからだろうか、油断していた。
「子どもだね」
僅かに愉快ささえ感じさせる声色に、ずきり、と心臓が痛んだ。



続きます。







子ども。

(やっぱり、そうなのかな・・・・・・)
雲雀は、自分を子どものようにしか見ていないのだろうか。
実は雲雀は小さいものとか、可愛いものとかが結構好きなことは知っている。
この前は小鳥を肩にとまらせているのも見た。
今、野菜を嫌ってよけている綱吉をおかしそうに見ている雲雀は、
綱吉をそういった愛玩動物のように考えているのだろうか。
だからペットを可愛がるように、あの『儀式』をするのだろうか。


それでもいいと、思っている。


違う、思っていたいのに。
こうしてショックを受ける自分が嫌だ。
恋い慕う以外でだって憧れている先輩に、一人前として認めてもらえないことだって、
情けなくてならない。

「口開けて」

沈んだ思考の中で聞えたその声に、従ってしまったのは無意識だった。
例え脅されなくても、綱吉はその声に逆らえない。
考えることなく開いた口内に、何かが押し込められて、今度は無理矢理力ずくで閉じさせられる。
広がったのはいっぱいの苦味。
「っ?!」
その瞬間にショックから放心していた意識が勢いよく戻ってきて、両手で口を押さえる。
苦い。
その苦味と、植物特有の歯ごたえに、ようやく皿の上の野菜が全て消えている事を知る。
「あにうんえうかいあいあん!」
「口に物が入っている状態で喋るな。行儀が悪い」
ドカッと一発殴ってからの台詞に、今度は頭を抑える。苦味の次は痛みだ。
もぐもぐと咀嚼する口の中はまずさしか感じない。まずい。まずいけれど。
もしかして。
(食べさせてもらっちゃった・・・・・・?)
それも、雲雀に。

かぁああああと頬が熱を持って、味覚が伝えるのは最悪としか言い様がなくて。
何も結構な量をまるごと一気に押し込めることはないじゃないかと冷静な部分は主張しているけれど。


どうしようもない感情をもてあましてへにゃりと嬉しそうに微笑む綱吉に、雲雀は言葉を失った。




寮生ヒバツナパラレル続編です。
再びHさんと語りまくりできたネタ。本当ありがとうございます!
なんとHさんも書いてくださるそうで寮生ヒバツナ企画のできあがり。
僥倖すぎます。普段の行い悪いのに(え
何気に「あーん」なヒバツナ。
すれ違ってるくせにバカップル(爆)
という訳で寮生ヒバツナはまだ続きます。(・・・







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