11月9日。
別に祝日でもなんでもないこの日は、しかし雲雀家の子ども達にとって、とても特別な日だった。


「くさかべさん、なにがすきかなー・・・・・・」
「父さんじゃない?」
蒼弥がやっぱり、という様に答える。
変な意味ではないが、他に思いつかなかった。
「むー・・・・・・ひなもくさかべさんだいすきなのにー」
びみょうにくやしいような、父親が好かれていて嬉しいような、複雑な気分だ。
「仕方ないよ。父さんだもの。僕だって好きだし」
彼らの父親は誰より高潔であり、美しく、強く、真っ直ぐで。
その姿を幼心に格好良いと憧れ、尊敬していた。
他人には容赦がないが、基本的に家族には優しい。
蒼弥が目標とする強さに誰よりも近い人。そんな父が好きだった。
彼らが慕っている彼の人物は、そんな父、雲雀恭弥を敬い、なおかつ唯一認められて付き従う第一の部下だ。
そもそもの関係がそこからの繋がりなのだから、当たり前と言えば当たり前である。
「うん。ひなもおとーさんだいすき」
父親の美貌と、母親の可愛気、見事に良い所だけを受け継ぎ、
へにゃ、と笑う少女は非常に愛らしい。
蒼弥は自然と、身近な人物にしかわからない程わずかに、頬をゆるめた。
しかし、ばらくすると少女の顔は、再び困り果てた表情へと変化する。
「でも、それじゃあなにあげたらいいかわかんないねー」
「うん」
「せっかくくさかべさんたんじょーびなのに・・・・・・」
幼い子ども2人は悩ましげなため息をついて考え込んだ。


11月9日。そう。この日は、彼らが慕ってやまない父親の部下こと、
草壁哲矢が、この世に生まれた日なのである。



くさたん没原稿が残っていたので。
本当はこれが冒頭に来る予定でした。
間の話を書く時間がなくてああなりましたが。
なんで雲雀兄妹はこんなに草壁さん大好きなんだろう・・・・・・(え


2007.11.20

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