息子ver 息子は→雲雀蒼弥
※子どもネタが苦手な方は注意
「あまり僕の前で群れないでください。咬み殺したくなるから」
まっすぐに流れる黒髪、鋭い瞳、せいぜい小学校にあがるくらいだろうに、年齢にそぐわない大人びた物腰。
言葉こそ丁寧ではあるが、その声と台詞には敬意はまったく感じられない。
「・・・・・・本当にヒバリそっくりな奴だぜ」
自称右腕である男は苦々しげに毒づく。敬愛する主の子は何故か大嫌いな男にばかり似てくる。
「ありがとうございます」
「褒めてねぇ!」
彼にとって父親である雲雀恭弥は尊敬の対象だ。反抗期はまだおとずれていないので(おとずれるかも微妙だが)
似ていると言われると嬉しい。もちろん、皮肉であることは百も承知だ。単なる皮肉返しだ。
いらない所まで父親に似てしまった少年は、父親ほど酷くはないものの、大勢の人間がいる状況が大嫌いだった。
母親の必死の教育により、理性でもってそれを押さえてはいるが、時折危害を加えても対処できる守護者相手に
こうしてストレス発散をしようとする。
特に簡単に挑発にのってくれる嵐の男は楽でいい。
ただ年齢と経験の差というのは意外と大きく、いまだ勝利をおさめたことがないのが腹立たしくてならない。
もちろん5歳かそこらの子どもに負けるようならマフィアのボスである母親の守護者なんて勤まらないのだが。
その程度の奴ならとっくの昔に父親に殺されている。
それでもおもしろくないのは変わらない。
おまけにボスの子であるというだけで、ここの人間はやたらと蒼弥にかまってくるものだから、
(片っ端からかみ殺しているが。それを回避できるのは幹部連中だけだ)たまったものではない。
必要がない人間は誰も近寄ってこなければいいのに、とおおよそ子どものものではない思考をもちつつ、
年上という種族に敵愾心のようなものをもっている己がひどく子どものように思えてならなかった。
「蒼弥はびっくりするぐらい恭弥さんに似てるよね」
「10代目!」
ぱっ、と忠犬のようにしっぽをふりつつ喜びに満ちた声をあげるのはもちろん自称右腕だ。
「……母さん」
そこにいたのはもちろん、ボンゴレ10代目ボス、雲雀綱吉旧姓沢田。
雲雀恭弥の妻であり、蒼弥の母親である。
蒼弥が唯一母親に似なくてよかったと心底思う恐るべき童顔、とてもじゃないがマフィアのボスには見えないほのぼのした
雰囲気。父親に似ている息子に心底嬉しそうににこにこしている。
それに軽く笑みと挨拶を返し、血は間違いなく繋がっているのに、何故こんなにも違うのだろうと不思議に思う。
「僕としては綱吉に似ていてもよかったけど」
「父さん」
珍しい人物の出現に少々驚く。
蒼弥の父親である雲雀恭弥は、基本的にあまりボンゴレ側には現れない。
夫婦でありながら何故か別組織に所属し、(いや一応ボンゴレの守護者ではあるらしいが微妙な所だ)
自身の組織運営の関係であちこち世界中を飛び回っている。
だから蒼弥はどちらの施設にも出入り自由であるにも関わらす、基本的にはボンゴレ側で生活しているのだ。
「仕事で話すことがあってね」
そう言ってほのかな笑みを向けてもらえることが嬉しい。
なるほど、だから今日は朝からやたらと阿鼻叫喚が聞こえてきたのか。どうやらあれは父に見つかったボンゴレの群れの断末魔だったらしい。
当たり前のように蒼弥は物騒なことを思った。
基本排他的な父親は許容する人間の割合がそれはもう低い。
だからこうして優しくされるのは、それだけ父親にとって自分が特別な証なのだ。(一番は間違いなく母だけれど)
後で手合わせをして欲しいと頼み、蒼弥は軽く辺りを見回す。父親がここにいるということは―――……
「草壁さん」
案の定、父親の少し後ろに控えていた長身のリーゼントを見つけて、名前を呼ぶ。
今まで両親以外には、不機嫌そうな表情か、皮肉気な笑みしか見せなかった少年は、初めて喜びからの純粋な笑顔をつくった。
「お久しぶりです、若」
「お久しぶりです」
蒼弥が更に小さかった頃、彼は忙しい両親の代わりに、よく周りの人間に世話を頼まれていたのだが、
その保育係を次々と脱落させ(理由はまあ色々)時には病院に送り、悩んだ両親(主に母親。父親は楽しそうだった)の苦肉の策として、
この青年に面倒を見てもらっていた時期があった。
そしてそれは見事成功したのである。一体何がよかったのか、蒼弥は大層この青年に懐いたのだ。
血かもしれない、と母親は生命の神秘をちょっと思ったとか思ってないとか。
「またお強くなられたようで」
「ありがとうございます」
照れくさそうに少年は笑む。誰だお前は。
変な所だけ母親の長所を受け継いでいるらしい少年は、好意を持つ相手に対しては大層素直だった。
草壁の他にはどこぞの家庭教師とか。やっぱり血かもしれない。
「大したものです」
「そうだといいんですけど。早く父にも追いつきたいんです」
「僕、将来草壁さんのようになりたいですから」
父や母の役に立てるようになりたいし、その髪型もやってみたいし。
しーん……。
そんな擬音語が聞こえてきそうな沈黙。
前半はともかく、後半、雲雀恭弥と同じ顔で、とてつもなく恐ろしい台詞を少年は吐かなかっただろうか。
同じように懐いていた男の髪型を真似している経験のある人物でさえ、複雑そうな表情で顔を歪めている。
母親は口をぱくぱくとさせ、父親は別段気にした様子がない。
「い、いや、それはおやめになったほうがよろしいかと……」
それ以外に何を言えと。
しどろもどろになりながら、草壁はなんとかそれだけをしぼりだす。
ああどこで何を間違ってしまったのだろうか。
おそろしく間が空いてしまった息子ver。
書きかけのまま放置でした(爆)
草壁さんに息子をなんと呼ばせるか散々迷ったあげくに結局「若」です。
いやだって本編が(逃げた)
娘のひなを妹にするかそれともまったく別の話にしておくべきか迷い中。
もし兄妹なら、さりげない問題発言が雲雀家のうりです(え
すいませんすいません調子にのりましたすいません(土下座)
2007.09.29