え?これって夢ですか?
「好きだよ」
漆黒の髪とつりあがった鋭い瞳、左腕には腕章、風紀ひきいる最悪最強最凶の並盛の秩序様がそうのたまう。
いきなりなんなんだ。てか・・・・・・
(何を?)
「?学校ですか?」
とりあえず一番可能性の高そうなものを挙げてみる。しかしそんなの今更言われるまでもなく知っている。
大体、いきなり知人と言えるか微妙な後輩に言うようなことではない。何がしたいんだこの人。
「いや、君が」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・はい?」
恐れも忘れて思わず間の抜けた返事をしてしまった。おそらくかなり間抜けな表情をしてるに違いない。
・・・・・・気のせいだろうか、今、信じられない言葉が返ってきた気がする。
うん、気のせいだ。
それか耳がおかしくなったんだ。
そう結論付けて、先ほどの台詞はオレの聞き間違いだということで落ち着いた。のに。
「だから沢田綱吉、僕はどうやら君が好きらしい。恋愛感情で」
「へっ・・・・・・うえええええええええっ?!」
ご丁寧にも恐怖の風紀委員長様は言いなおしてくださった。
ああわざわざすいませんっていうかやっぱり気のせいじゃないんですかーーーーー?!
「何その反応」
むすっと拗ねたように言う彼には照れも何もない。
さらっと、今日はいい天気だね、となんでもないことのようにあっさりと、気持ちを伝えてくる。
え、ていうかこれ告白なの?!
そう思わず確認したくなるぐらいにはヒバリさんは普通だった。
そうじゃなくったって信じられなくても無理ないとオレは思う。だってヒバリさんだよ?!
この人を知っている人物はきっと全員信じられないに決まってる!!
「ヒバリさん何か変なもの食べたんですか?!それとも新手の嫌がらせ?!」
「失礼な子だね」
確かに、仮にも告白してきた相手に向かってそれは失礼だろう。だが今オレはそれどころではないのだ。
「だってヒバリさんが人に好きだとか言うなんて信じられませんっ!
ましてや美人でかわいくいてスポーツも勉強もできる女の子とかじゃなくってオレぇ?!」
運動も勉強も芸術もからっきし、容姿だってごくごく平凡なダメツナに、そんなこの人に気に入られるような要素はない。
大体そもそもオレ男なんですが!!
「うん」
「うん、てあんた自分で言ってることわかってます?!」
「だから君が好」
「うわあああ!!!う、嘘だ!!きっとオレが勘違いしてるだけでこれ夢なんだ!」
「どうしてそこまで頑なに信じないのかな」
「だってヒバリさんがオレを好きとか信じられるわけないじゃないですか!
オレヒバリさん殴ったことあるし割と群れてるし弱いしダメツナだし顔もよくないし
いつも変なごたごたに巻き込んじゃってるし!!!そんなオレを好きになってくれるとかありえませんから!」
「絶対に?」
「絶対に!」
それはもう間違いなく。
「ふーん」
わかっているのかわかっていないのか微妙な返事だった。
「わかった」
あ、どうやらさすがのオレもそんなのに騙されたりはしないとわかってくれたらしい。
きっとこの後にはつまらない、とかじゃあね、とかそんな言葉が続くに違いない。ほっと胸を撫で下ろす。
「じゃあ、愛してる」
ほら、やっぱり。ヒバリさんがオレなんかを好きなわけないじゃん。
「そう、そうですよね。嘘ですよね好きなんて。本当は愛し・・・・・・ええええええええ?!」
「真っ赤だね」
そのヒバリさんの指摘どおり今オレはすごいことになっている。顔はもちろん頭から指の先まで前進真っ赤だろう。
いやだってしょうがなくない?!
先ほどの比ではない。好き、どころかますます信じられないことをのたまった相手にむかってオレは無我夢中で叫ぶ。
「う、だ、だってちょっとまってくださいなんでそんな事になるんですか?!」
「だって君が『好き』になるのは信じないって言うから。だから愛してるなら信じるかと思って」
「うわあああ!!そもそもそれ根本的に何か違いますからーーーー!!!」
てかなんでそれで信じるとか思ってんのこの人?!
絶対にどこかずれている。いやそれは前々から知ってたけどこの人激しく唯我独尊だし!
「じゃあさっさと信じればいいんだよ」
「む、ムリです!」
「なんで」
「だってこんな幸せいっぱい都合のいい展開でオレもずっと好きでした愛してます
お付き合いしてください!なんて答えて夢オチだったらオレめちゃくちゃ痛い奴で
あまりの情けなさといたたまれなさと虚しさと悲しさとアホさ加減にいっそ死にたくな―――・・・・・・あ」
「ワオ、それって返事だと受け取ってもいいのかな?」
「うぎゃーーーーーーーーーーーっ!!!!」
オレのアホ!お馬鹿!リボーンごめんお前の罵りを今なら全て受け入れるよ!
先ほどのヒバリさん以上に色気もへったくれもない。
けれどヒバリさんは上機嫌に口の端に笑みを浮かべていて。
うっかりそれに見惚れてしまったオレは壊滅的に救えなかった。
ああもうむしろ誰か夢だと言って!!!
『好き』だと言って信じてもらえなくてじゃあ『愛してる』という
どこかずれた雲雀さんが書きたかったんです。ええ、私『は』満足です。(爆)
・・・・・・短いにもほどがある。
2007.8.21