「なんだツナ、プールだめなのか」




やくそくはまもるものです




「う、うん。オレプールに入ってる塩素とかアレルギーでさ」
「そっかー、残念だな。暑い中ひとりだけまってるとかって暇だよな」
「十代目!なんてお可哀想にっ!!はっ!オレもさぼりますんで一緒にふけましょう!」
「い、いいよ獄寺君!オレは慣れてるし平気だからさ」
なんせ嘘である。学校側に診断書まで提出しているが真っ赤な嘘だ。
単にプールの授業なんて性別がばれてしまうから入れないだけなのだ。
しかしそれを知らない友人はその言葉を疑いなく信じている。
良心がずきずき痛むが背に腹は変えられない。
「それにオレいつもプール入らない代わりに他の用事があって
 それで受けたことになってるし、暇ってわけじゃないんだよ」
「へー、先生の手伝いとか?」
「うんまあそんな感じ。ほら、本当におくれちゃうって!2人とも行った行った!」
これは本当だった。ただし手伝うのは『先生の』用事ではない。
あえていうならこの時間、先生達は本当に気の毒そうに自分を見る。
もらえる水泳の成績はもしかしたらその罪滅ぼしなのかもしれないと結構本気で最近思う。

何せ自分が向かう先は『応接室』なのだ。



応接室のまえでノックをしてあいてるよ、という返事にドアノブに手をかけた。
「綱吉?」
入室者を確認したこの部屋の主は一瞬珍しいとでもいいたげに
驚いたが、時期を思い出したのか、ああ、と納得した風だった。
「水泳の授業始まったんだ」
「はい」
そう、自分がするのは主にこの人の雑用だ。
中学生になってから、水泳の授業をいつも見学するオレに丁度目をつけて
「どうせ参加しないなら借りてくよ」
という鶴の一声でここに呼び寄せている。
偽装の診断書を用意してくれたのもこの人だった。
当時、水泳の授業をどうやって回避しようかと悩んで相談したオレに、
どこからかその診断書をもってきて
「これをだしておきなよ。貸しひとつね」
と言って渡してくれたのだ。どうやって用意したのかは聞けなかった。
・・・・・・っていうか聞かなかった。だって怖い。絶対まともな方法じゃない。
当時は小学生だったにも関わらず、この幼馴染の権力は一体どうなってるんだろう。

ちなみにそうやって水泳の授業を受けたことのない綱吉だが、
ダメツナの称号どおりやっぱり水泳もできないかと思いきや、
実のところそうでもない。人並み程度に泳げたりする。
原因はもちろんヒバリだった。
ある日水辺でやりあって池に落ちたとき、綱吉は溺れかかったのだ。
その時はヒバリが助け出してくれはしたのが、それが気に食わなかったらしい。
泳げるようになるまで特訓させられた。あれは今思い出しても鬼だと思う。
戦闘ではないからスイッチが切り替わらないし、「ダメツナ」の能力で
なんとか泳げるようにならなければならなかったので、苦労もひとおしだ。
でもそのおかげで泳げなくなる心配もなくこうしていられるのは結構嬉しかったりする。
「これが終わったらお茶にしようか」
「はい、オレ準備してきます!」
お茶を入れるのもヒバリに鍛えられたことのひとつだ。
ダメツナな自分でも役に立てるので、これだけは習ってよかったと心底思っている。
最近周りには誰か必ず人がいるので(主に人間爆撃機とか)2人で会える時間は貴重だ。
綱吉は内心少しうきうきしながらお湯を用意し始めた。




授業終了まであと50分。








短い。でも拍手には長いので結局ここに。
「困ってたら助けてあげてね」を実はこっそり守っている雲雀さん。
教師達には同情されても本人は喜んでますなオチ。
山と獄は絶好調勘違い中(爆)

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