なんでこんなことになっているんだろう。

さほど早いとは言えない(何故なら綱吉は起きるのが遅い)朝食の席。
寮生用のかなり広さのある学食で、何故か向かいには一つ上の先輩。
それが普通の先輩なら何の不思議もない。ありえなくもない光景だろう。
ただし、相手はどう転んだところで普通とは言えない人物だった。
「さっさと食べなよ。君、食べるのも遅いんだから」
綺麗な姿勢、箸使い、気品さえ感じさせながらもくもくと朝食をとっているのは、
群れが嫌いで有名な風紀委員長雲雀恭弥。
本来なら朝のこむ時間帯で席が足りなくなるのもありえる食堂で、
綱吉の半径5メートルはクレーターができたかのごとく人がいない。
理由は目の前のこの人が怖いからだ。触らぬ神に祟りなし。
もう一度思う。
何故こんなことになっているのだろう。
実はこうして一緒に朝食をとるのは初めてではない。
雲雀は朝でも仕事があるらしく毎日とまではいかないが、それでも一週間に一回はこうして一緒に食事をする。

何が目的かは知らないが、ぶっちゃけ綱吉は少々怖かった。

(そりゃ、嬉しくないって言ったら嘘なんだけど・・・・・・)
自分の気持ちを自覚している以上、やっぱり好きな相手とこうして一緒にご飯を食べられる事は嬉しい。
そもそも一緒にいられる時間が増えるのは大歓迎なのだ。
それでも恐怖を感じてしまうのは、まあ、それとこれとは別ってことで。
「君、好き嫌いしすぎじゃないの」
「ほ、ほっといてください」
綱吉のトレイの上を見ての台詞に、思わず言い返してしまってから、しまったと青褪める。
相手は恐怖の風紀委員長様なのだ。気分を害したら咬み殺される。
しかし恐る恐るみやった相手はさして機嫌を悪くした様子はなかった。
胸を撫で下ろす。だからだろうか、油断していた。
「子どもだね」
僅かに愉快ささえ感じさせる声色に、ずきり、と心臓が痛んだ。





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