子ども。

(やっぱり、そうなのかな・・・・・・)
雲雀は、自分を子どものようにしか見ていないのだろうか。
実は雲雀は小さいものとか、可愛いものとかが結構好きなことは知っている。
この前は小鳥を肩にとまらせているのも見た。
今、野菜を嫌ってよけている綱吉をおかしそうに見ている雲雀は、
綱吉をそういった愛玩動物のように考えているのだろうか。
だからペットを可愛がるように、あの『儀式』をするのだろうか。


それでもいいと、思っている。


違う、思っていたいのに。
こうしてショックを受ける自分が嫌だ。
恋い慕う以外でだって憧れている先輩に、一人前として認めてもらえないことだって、
情けなくてならない。

「口開けて」

沈んだ思考の中で聞えたその声に、従ってしまったのは無意識だった。
例え脅されなくても、綱吉はその声に逆らえない。
考えることなく開いた口内に、何かが押し込められて、今度は無理矢理力ずくで閉じさせられる。
広がったのはいっぱいの苦味。
「っ?!」
その瞬間にショックから放心していた意識が勢いよく戻ってきて、両手で口を押さえる。
苦い。
その苦味と、植物特有の歯ごたえに、ようやく皿の上の野菜が全て消えている事を知る。
「あにうんえうかいあいあん!」
「口に物が入っている状態で喋るな。行儀が悪い」
ドカッと一発殴ってからの台詞に、今度は頭を抑える。苦味の次は痛みだ。
もぐもぐと咀嚼する口の中はまずさしか感じない。まずい。まずいけれど。
もしかして。
(食べさせてもらっちゃった・・・・・・?)
それも、雲雀に。

かぁああああと頬が熱を持って、味覚が伝えるのは最悪としか言い様がなくて。
何も結構な量をまるごと一気に押し込めることはないじゃないかと冷静な部分は主張しているけれど。


どうしようもない感情をもてあましてへにゃりと嬉しそうに微笑む綱吉に、雲雀は言葉を失った。







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