「きょ、きょうやさんのおにいさん?」
「は?」
話は数時間前にさかのぼる。その日はたまたまディーノがイタリアから様子を見にきていて、
いつものメンバー+ディーノでいつものようにツナの部屋でわいわいやっていたのだ。
そんな中。いつものようにランボが獄寺にいじめられて、
これだけワンパターンなのにもかかわらず学習能力の無いらしい子どもは、これまたやっぱり
10年バズーカをとりだし、打とうとした。
そこからがいつもと少しだけ違った。
10年バズーカはつい昨日、ランボが投げた手榴弾の爆発に巻き込まれて、原型は留めてはいるものの、あっちこっち壊れていたのだ。
そこで壊れている際の10年バズーカの危険性を思い出したツナが、とっさにランボを止めようとして。
お約束通り、もみあっているうちにそれはツナに向けて発射されたのである。
次に煙が晴れた頃には、そこにいたのは中学生の綱吉よりも明らかに小さい姿。
未来どころか過去、4、5歳ごろの綱吉がそこにいた。そこから先はいわずもがな。
そうして小さくなってしまった綱吉はとても怯えていた。
気が付くと目の前には知らない大人(正確にはまだ大人とは言えない年齢なのだが、まだ小さい綱吉にとってあまり違わない)
がたくさんいて、しかも皆目つきが悪かったり普通より背が高かったり物騒なものを持っていたり、
むしろそもそも日本人に見えなかったり、とても怖い。
しかもそれだけではなく、綱吉とそう年齢の変わらない子どもも3人ほどいて、一体自分はどんな所に迷いこんでしまったのかと
辺りを見回すと、少し様変わりしているものの、どうやら自分の部屋っぽかった。
信じられないことに、自分が迷ってきたわけではないらしい。ではこの人達は勝手に自分の部屋にはいってきていることになる。
「お、おにいさんたち、だれですか・・・・・・?」
小さくなってしまった綱吉は、もちろん獄寺達のことを知るはずがない。
精一杯の勇気をもってそう聞いた。
「はは、おにいさんだってよ。ほんとにちっちゃくなっちまったなーツナ」
そう言って頭を撫でてくるのは金髪のやたらとかっこいい人。
相手はこちらの名前を知っているらしい。けれどもちろん自分はこの人を知らない。
あからさまな外国人なら1度見ればそう忘れないはずだ。
「跳ね馬!10代目に馴れ馴れしくすんな!」
びく、と綱吉の身体が恐怖で震える。この大人3人の中で、綱吉はこの銀髪の青年が一番怖かった。
喋るとそのほとんどが怒鳴り声で、目つきも悪いし、今のところ綱吉にはまだ向けられていないが、言動も怖い。
特に最初牛柄の人に、テメー10代目になんつーことを!とか意味のわからないことを言いながら
何かどかーんとする痛そうものを投げているのを目撃してしまってからは、完全に危険人物扱いだ。
やがてその人物のつっかかりは激しくなっていき、黒髪の男がさすがにそれをなだめ始めた。
自分と同じ年ぐらいの子達は先ほどの騒ぎでぼろぼろになってしまった牛っぽい子を介抱している。
注意が一瞬自分からそれたのをいいことに、綱吉はここぞとばかりに逃げ出した。
(ど、どうしよう・・・・・・)
迷った。家からとにかくがむしゃらに逃げてきたせいか、周りはまったく知らない建物ばかり。
とにかく知っている道を探さなければ。
しかし何故か進めば進むほど辺りは見覚えがなくなり、更には人通りもない、いわゆる裏路地、と呼ばれる所にでる。
「ここどこ・・・・・・」
もうこうなれば人にきくしかない、と腹をくくり、誰かいないか探そうと周りを確認すると、
近くの角から鈍い物音が聞こえる。
(なんだろ・・・・・・)
成長した綱吉ならば危機感を感じてちかよらなかったかもしれないが、そこは子ども。
子どもとはえてして好奇心の強い生き物なのである。
とことこ角の方へ向かうと、塀の向こうを覗き込む。
そこは戦場だった。
地にひれふした屍の山と、その中心に堂々と立つ黒。
どこかの黒い制服を着て、腕に何かをつけ、銀色の武器を光らせて。
「誰?」
その人物は鋭い目つきでこちらを振り返る。それはいっそ死神にさえ見える漆黒の獣。
(あ―――・・・・・・)
あの人だ、と思った。なんの疑問もなく、すんなりと。黒い人、黒い獣。その美しき誇り高さ。
綱吉はよくよく見てみるとそれがどこかおかしいことにも気づかず、その見慣れた光景に無条件で安堵し、
「きょうやさんっ・・・・・・!!」
問答無用で抱きついた。
「よかった!しらないひとばっかりでおれどうしたらいいのかわかんなくてっ・・・・・・!!」
とにかく安心してしまっていた綱吉は、すでに涙目だ。
「・・・・・・君、誰?少なくても僕は君に懐かれる覚えがないんだけど」
そんな必死にすがりつく子どもに、相手は困惑とばかりに冷たい言葉を返した。
「へ?きょうやさん?」
滅茶苦茶だし理不尽ではあるけれど、基本的には自分に優しい知人の予想外の反応に、
顔をうずめていた綱吉はようやくその視線を上へと向ける。
(・・・・・・あれ?)
そこで抱きついた相手がなんだかいつもの感覚と違う気がして、あれ、と綱吉はよくよく振り返ってみる。
ほぼ真上といっていいほど見上げた先(こんなにおおきかっただろうか)、いたのは知り合いそっくりな、
しかし身長、年齢、微妙に声色、明らかに違う。
え・・・・・・ダレ。
他人の空似には似すぎている。きっと雲雀が成長したらこんな感じだろうと思わせる青年。まさか。
「きょ、きょうやさんのおにいさん・・・・・・?」
「は?」
とりあえず並盛の風紀委員長様は、どこかぬけた反応を返した。
そこでようやく、意味のわからない変なことを言う幼児をよくよく見直してみる。
クセのついた色素の薄い髪、大きな瞳、小柄な身体。最近ではめっきりなくなった、自分を『きょうやさん』と呼ぶ声。
その容姿には確かに見覚えがある。ありすぎるほど。自分と最も関わりがあるといっていい他人。
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
いやまさかしかし。
「・・・・・・綱吉?」
「は、はいっ!オレのことしってるんですか?!」
「嘘でしょ・・・・・・」
まさか、と思って出した言葉に、小さな子どもは当然のように肯定を返した。
誰からも恐れられる最凶の男は、その時初めて現実逃避という言葉を知った。
確かに子どもだ子どもだと思ってはいたが。
(・・・・・・本当に子どもになるなんて)
普通ならまさかそんなことありえるはずがないが、最近この子の周りは本当になんでもありなのだ。
「あ、あのすいません。きょうやさんはいまどこにいるのかわかりますかっ?」
必死ささえうかがえる全面的に『きょうやさん』を頼りにしているらしいその子どもの質問に、
どういう顔をして本人だと言えばいいのか、雲雀は途方にくれた。
>>
・・・・・・やっちゃった感が。うん。
せっかく幼馴染なんだからやらないといけない気がして(黙れ
唐突に書きたくなったネタを勢いで。わりと短めにこそこそと。
・・・・・・続きます(爆)
以下私信
Aさん、いつもお邪魔してすいません。そしてヒバツナヒバツナばっかり言っててすいません。
大好きです!(面とむかって言えよ!)