「じゅうだいめーーーーーっ!!!よくぞご無事でっ!!
ヒバリてめー10代目に何してやがるその手を離せっ!!」
沢田家近くの道端。そう叫びつつダイナマイトを構える駄犬。(五月蝿いよ)
その剣幕と叫び声ととりだした危険物に、腕の中の子どもがビクリと震えて、
肩に置かれていた手が、無意識なのかそのまま制服の布を縋るように掴む。
・・・・・・とりあえず咬み殺しておくべきだろうか。(いやはなからそのつもりだが)
ひとまず綱吉を地面に降ろした雲雀は、綱吉認定で「こわいひと」をとりあえず咬み殺した。
咬み殺された本人は、地面に伏して息も絶え絶えになりながら、じゅ、じゅうだいめ・・・・・・と呟いている。
大した忠誠心である。やはり犬だ。小さくなった綱吉を見失う駄犬だが。
(ちなみに止めは綱吉が止めた。いくら怖くても他人が傷つくのを見るのは嫌らしい。雲雀認定「駄犬」はそれにまたいたく感動していた)
「きょ、恭弥っ?!」
爆音やら何やらで何か起こっていることを察知したらしい山本とディーノがかけよってくる。
そしてようやく見つけた綱吉が凶悪人物の傍にいるのを認識すると同時に、声をあげた。
再び知らない大人がやってきた事に怯えた綱吉は、さっと雲雀の後ろに隠れた。
そこから緊張したおももちで乱入者を見つめる。
それに事情を知らない二人はすくみあがった。
「つ、ツナっ、そこは危ないからこっちにこい!」
下手に動くと綱吉を咬み殺されるのではないかと怯えた二人は、
野生の肉食動物にするように警戒しながら、じりじりと近寄っていく。
それが更に恐怖感を煽ったのか、綱吉は雲雀の片足にぎゅっとしがみついた。
さすがに動きにくいと感じた雲雀は抗議する。
「綱吉邪魔」
「ご、ごめんなさっ・・・・・・」
しかしこの中で(むしろこの時代で)小さな綱吉が信用できる知っている人物は、雲雀だけなのである。
そう言いながらもその手は離れない。雲雀を見上げてくる瞳はすでに涙でいっぱいだった。
「・・・・・・」
本人に自覚はなくとも雲雀は基本的に綱吉には甘かった。
仕方が無いので再び抱き上げてやると、子どもは胸元に顔をうずめてくる。
それに少しため息をついてから、信じられない光景に唖然としている三人組に向き直った。
なんやかんやで詳しい事情を聞くため、始まりの部屋へと立ち戻る。
ちなみに綱吉は胡坐をかいて座った雲雀の膝の上だ。
他三人がなんとか危険人物から遠ざけようと呼んでみたものの、
信頼している雲雀から引き離そうとする人物、と逆に警戒されてしまった結果である。
いつまでも雲雀の背に隠れているのでは話をすのによろしくなく、かといって隣に座らせると腕がまるまる一本占拠されてしまうので邪魔。
三人組の傍なんて論外。その条件のうち、できるだけ雲雀の近く、で選んだ場所なのだ。
時々頭を撫でられて、綱吉はわりとご満悦だ。
「で?これはどういう事?」
「え?」
その光景を複雑な気分半分、不安半分で見ていたディーノが、突然問いかけられて思わず間の抜けた返事を返した。
ちなみに山本はにこにこ微笑ましそうに見つつ、今にも飛び掛っていきそうな獄寺を抑えている。
「どうしてこの子はこういうことになってるの」
「あ、いや・・・・・・10年バズーカが誤射して―――」
「何それ。また変な遊び?それでこの子は縮むわけ?」
「縮んだというか多分数年前のツナと入れ替わってるんだと思うぜ。
つまりこのツナは今のツナが小さくなった訳じゃなくて、数年前からやってきた過去のツナなわけだ」
「かこ?」
話についていけていない綱吉が不思議そうに問いかける。
「君にとってはここは未来ってこと。この時代にも大きく・・・・・・まあ少しは成長した君がいたんだ。
その未来の君と、君が入れ替わって、ここにいる」
「はあ・・・・・・?」
わかっているのかいないのか微妙な返事だった。子どもとしては必死に理解しようとしているらしいが。
「たむす・・・・・・えっと・・・・・・」
「タイムスリップ?」
「はい!」
単語を思い出せないらしい子どもが言いたいことを察していってやると、それだ!というような肯定。
「・・・・・・まあそんな感じだね」
単語を覚えているかは別にしても、その表現自体は的をいている。
自分の言葉に同意を得られて子どもは嬉しげだ。
「それで?これはいつ治るの」
「わ、わからん。たぶんある程度時間がたつか、壊れたバズーカを直せばどうにかなるんじゃないかとは
思うんだが・・・・・・今までも大体そんな感じだったし」
「時間ってどれくらい?」
「さあなあ・・・・・・」
役に立たない。
「赤ん坊は」
「今たまたまイタリアの本部の方に用事があってな。元々、その為に俺が代わりに
こっちに呼ばれてるんだ」
「テメーなんざいなくても10代目の護衛は俺ひとりでじゅーぶんだっ!」
「五月蝿いよ駄犬。もう一度咬み殺されたい?」
ただでさえ群れと関わっていて機嫌がよくない雲雀は本気だ。
それに気づいたらしい綱吉が慌てて腕にしがみついて止めようとするので、まだ二度目の被害者はでていないが。
自分達には全身で警戒を表す綱吉が、そうして雲雀にはすっかり気を許している様をみて、ディーノが感嘆の息をもらす。
「それにしてもよく恭弥にそれだけ懐いたなぁ・・・・・・案外小さい子どもには好かれるのか?」
それに反応したのは、雲雀本人ではなく綱吉だった。
「・・・・・・きょうやさんのしってるひとなんですか・・・・・・?」
金髪の人物が親しげに雲雀に話しかけるのを見て、驚きと、自分以外に雲雀と
仲の良い人物(母親を除いて自分以外で名前を呼ぶ人物なんて初めてだ)という存在に
悔しさと悲しさと焦りと不安と、それから敵対心のような物を、綱吉は感じた。
(それが世間一般で嫉妬と呼ばれるものであることを綱吉は知らない)
すぐ後ろにいる人物を振り返って見上げながら、軽く訊ねる。しかしこれには予想外な大反応が返ってきたのである。
「じゅうだいめーーーーーーーーっ?????!!!!!」
殊更大きな声に子どもの心臓が跳ねた。叫んだ以外の二人も、唖然としていた。
自分は何かまずいことを言ったのだろうか。
獄寺の今にも殴られそうな剣幕に、幼い子どもは再び泣きかける。
しかしそれは綱吉ではなく、綱吉を抱きこんでいる状態の保護者(?)に向けられていた。
「ヒバリてめー10代目に記憶が無いからってあることないこと吹き込みやがったなっ?!
変なこと教えてんじゃねーっ!!10代目今すぐそいつから離れてください!奴の言葉を信用してはいけません!」
自称右腕は絶好調勘違い中だ。無理もない。現在でもそこまで交流のない相手を、
小さくなった主がいきなり名前よびなのである。綱吉の記憶がないのをいいことに、勝手な認識をうえつけたととれなくもない。
それはむしろ妖しい変質者とでもいいたげな勢いだ。雲雀としては言いがかりも甚だしいが。
「・・・・・・そっちこそ変なこと言わないでくれる。僕は別に何も言ってないよ」
「え?え?」
じゅうだいめ?先ほどからやたらと口にしてはいたが、もしかしてそれは己のことなのかと
綱吉はようやく気づいた。それから、どうやら雲雀が悪く言われているらしいことも。
それを認識した綱吉は、びくびく震え、泣きかけながらもキッと獄寺を睨みつける。
「きょ、きょうやさんのことわるくいうな!!」
震えたままで叫んだ。それはもしかしたら、綱吉が初めて獄寺に使う命令口調だったかもしれない。
それだけ言うのにも死ぬ思いだった。少なくとも、ぼろぼろになるまで殴られる覚悟だった。
それでも言わなければならなかった。例え時間がすぎて成長していようと、「きょうやさん」は自分を助けてくれたのだ。
それを誤解されてひどく言われるなど、綱吉にとってそのまま流してしまうことを自分に許せることではない。
「じゅうだいめ・・・・・・っ!!そんな奴名前で呼んでやる必要ありません!」
獄寺はあまりの事態にすでに泣き出している。
綱吉としては怖いだけでさっぱり意味がわからない。そもそも綱吉は元々最初から雲雀のことは
「きょうやさん」とよんでいるのだ。どちらかといえば「ヒバリさん」の方が馴染みは薄い。
困惑して雲雀を見上げる。すると雲雀はあっさり答えた。
「君、大きくなったら僕のこと苗字で呼んでるんだよ」
「そうなんですか?!あっ!お、オレきょうやさんてよんじゃだめなんですかっ?!」
「いいよ別に。好きにすれば」
そんな会話をしつつ、まだぎゃあぎゃあ騒いでいる忠犬は軽くスルーだ。
「落ち着け獄寺、ほら、ツナが怯えてるって」
「ぐっ・・・・・・!!」
山本が必殺「ツナ」を引き合いにだして獄寺をなだめる。
「俺はキャバッローネのディーノだ。よろしくな、ツナ」
そんな光景に苦笑しつつ、綱吉の「きょうやさん」呼びを雲雀が特に気にしていないことと
雛鳥のようにくっついていても咬み殺す様子がないのにようやく安心した年長者は
雲雀云々よりもまずは自分への警戒をとくことが重要だと気づいたらしい。
そのあいさつを皮切りに、他のメンバーも各々の自己紹介を始める。(ちなみに他のちびっこは雲雀の危険性を考えて部屋から遠ざけている)
(きんいろのひとがディーノさんで、こわくてきょうやさんにひどいこというひとがごくでらさんで、
やさしそうなひとがやまもとさん・・・・・・)
ていうかキャバッローネってなんだろう?
哀れな右腕の健気だがしかし的外れな行動は、幼い綱吉にはその心意気をくみとられることさえない。
獄寺は名前を覚えられようと依然として「こわいひと(やや敵より)」という悲惨な認識だった。
―――そんな綱吉の内心を知る方法がないことだけが救いである。
「しっかしどうするべきかな。いつ戻るかわかんないしツナの母親にこんな状態を
みせていいものか・・・・・・」
「んーそうだよな。ツナ戻るまで家こいよ。親父も子ども好きだし、しばらくなら平気だぜ」
山本が軽くいった。どんな状況でも人を安心させるそういう態度が彼の長所だ。
「テメーなんかに10代目のお世話をまかせられるか!10代目のお世話は俺におまかせを!」
「・・・・・・?」
いきなり決定されそうな事態を子どもは理解できていない。
「奈々にばれたら驚かれるから他の家にしばらくいたらって話だよ」
「えっ・・・・・・ほかのうち・・・・・・ですか?」
怖さからくる怯えだけとは思えないほど、ものすごく困ったような子どもの表情に、
そういえばこの子は性別を隠しているのだと雲雀は思い至る。
それを知らない家にとどまるのは、やはりあまりよろしくないだろうか。
野球の性格から考えるに、小さな子ども―それも男だと思っている、を預かったら一緒にお風呂、とかもやりそうだ。
父子の背中の流しあいだとか(雲雀には理解できないが)をいかにも好んでやりそうな体育会系だ。
鞭男は周りの見かけるたびに咬み殺したくなる黒服連中が綱吉は駄目だろう。
しかし黒服がいなければはっきりいって小さくとも綱吉の方がまだ役にたつ。
ちなみに雲雀の中では獄寺に預けるなんて論外中の論外である。可能性にさえあがらない。
「・・・・・・家にくる?」
「はいっ!!いいんですかっ?!」
それが一番いいだろうと考えた雲雀の提案に、子どもは救われたように喜色満面の笑みを浮かべる。
まあ奈々には後で家にしばらく泊めると連絡しておけば問題ないだろう。
そうしていまだに論争を繰り広げるメンバーをよそに、雲雀は綱吉を抱き上げると
そのまま窓から外へでて、人ひとり抱えているとは思えない優雅さで、地面に飛び降りた。
「ここは右腕の出番だろうが!」
「でもなーツナ獄寺怖がってるみたいだし・・・・・・」
二人は論議に夢中で気づかなかった。
それに気づいたディーノだけが、ぽかんとなんとも言いがたい表情で見送る。
「まあ恭弥なら護衛としては申し分ないような・・・・・・?」
しかしあいつが素直にツナを護ってくれるんだろうか。
いや連れてったんだからそのつもりだと思いたい。
そもそも子どもの相手なんてできるのだろうか?でもツナはやたらと懐いてたしなぁ。
一体これはどうすべきなのだろうと、問題が山積みの状態に頭を抱えた。
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またしてもコメントに影響されました・・・・・・!!
こんなに影響されやすくていいのか自分。大丈夫なのか自分。
だってときめいたんだもの!(逝ってこい
腐女子→萌えに忠実→ときめいたら即書く。よし!!(何が)
・・・・・・それにしてもこれって時間軸どこなんだろう(オイ
幼馴染バレはしてないけど雲雀さんとディーノさんが面識あり?
あれ、リング戦終わってる?あれ、でもそれにしては・・・・・・
うん、番外ですからね!(逃げた
だから管理人は獄寺好きですってば・・・・・・!!(誰にも信じてもらえそうにない)
2007.7.20